第2段階への道(藁)


、どこの病院を選ぶか

 まずは、自由診療でいくかどうかです。
 わたしは個人的には、自由診療はまったくOKだと思っています。だいたい、ガイドラインに乗ろうがどうしようが、結局さまざまなリスクは自分で背負わないといけません。それと、たとえ性別適合手術(sexual reassignment sergery・以下SRSと略)を受けたとしても、それが「ゴール」なわけじゃなくて、人生の通過点でしかないと思っています。基本的に、わたしはGID治療は、QOLを高めるためのものであると思っていますので、『トランスジェンダリズム宣言』でも、「SRSの美容外科化を!」としたあと、「美容整形を医療と認め、保険の適用を」としています。

 ただ、基本的にこういう考えをしているのですが、自分がどういう医療機関を選ぶかということについては、また別の問題です。
 日本におけるガイドラインに沿ったGID治療はまだまだはじまったばかりで、各病院がさまざまな模索をしながら方法を検討しているところといっていいと思います。そんななかで、わたしも方法の検討に協力ができればと思っています。そして、医者と協力をしながら、前述の内容について実現をしていきたいと思っています。ということで、どういうわけか(笑)、ガイドラインに乗っかっていくことにしています。

、ファーストコンタクト

 ということで、わたしの場合、まずは岡山県立岡山病院からスタートしました。ここには、中島豊爾さんという、たいへん懐の深い(笑)方がおられます。この方との出会いが、先ほどのわたしのスタンスのベースをつくったといっても過言ではありません。
 はじめてここに行ったのが、2001年4月20日のことでした。それから6月・7月と行ったのですが、結局、さまざまな状況の中で、第2段階への移行が困難なために、通院が一時中断になりました。ただ、2002年3月に、『部落解放(2002年5月号)』の座談会への参加のために、診断書をもらいに行ったことがあります。
 その後、『トランスジェンダリズム宣言』のインタビューなど、まったく患者とは思えない形で病院に行ったことはありました。
 わたしの状況が変わってきたのは、2003年も年末になってからのことです。日常生活上のめんどくささの中で、「改名」を希望すると同時に、第2段階への移行についても家族の協力が得られそうになりました。そこで、改名のための診断書と、第2段階以降の病院への紹介状を書いてもらいに、2003年12月26日、再び中島さんのところに行きました。結局このときには、改名のための診断書は書いてもらいましたが、次の病院を決めていなかったため、紹介状については後日ということにしました。

、転院

 2004年2月現在、大阪医科大学付属病院がGID治療についての倫理委員会を持ち、第3段階までを射程距離に入れていることで知られています。そして、ここだけというふうにも言われています。しかし、実は、関西医科大付属病院でも、GID治療をはじめています。
 わたしは種々検討した結果、関西医科大学付属病院に行くことにしました。岡山の中島さんには、その旨を伝えたところ、快く紹介状を書いていただけ、郵送で送ってもらえました。
 2004年1月29日、はじめて関西医科大学付属病院に行きました。
 あらかじめ電話で行くことを伝えてあったので、受付をして、精神神経科の待合室に行くと、まもなく看護婦さんが来られて「電話の方ですね」と話してこられ、まもなく診察室に入れてくれました。
 ここでGID治療にかかわっておられるのは織田裕行さんです。この方も、たいへん研究熱心で、どうすればいい治療ができるかについて、患者から学んでいきたいという姿勢を持っておられます。
 ここで問題になるのは、中島さんの紹介状や診断書をもって、ファーストとし、関西医科大学付属病院でセカンドを出すということが可能かどうかということです。岡山大学医学部付属病院→大阪医科大学付属病院では、そういう連携はとられています。関西医科大学付属病院では、まだ他の病院からの転院という形で患者を受け入れた経験はないそうですが、最初の診察の時の感触では、連携はとってもらえそうな感じでした。
 この日は、待合室での性同一性障害専用の問診票への記入。それに基づいての簡単な聞き取りが主な内容でした。あと、中島さんの紹介状の字を読むにはコツがいるので、読んであげたなどのショーもないネタはありました。
 忘れてはならないのは、ここではGIDの人のカルテに「本人の確認は名字と生年月日でおねがいします」というハンコを押してくれることです。まだまだ病院全体に浸透しているわけではないようですが、こういう配慮は、必要な人には必要なので、大切なことだなぁと思います。
 精神神経科の診察が終わったあと、血液検査(肝機能・ホルモンバランスなど)と心電図の検査があり、この日は終わりました。値段は8960円でした。

、泌尿器検査

 ガイドラインによると、性同一性障害の診断を確定するためには、
1、インターセックスではないこと
2、他の精神病を併発していないこと
3、2人以上の精神科医の診断が一致すること
が必要とされています。
 1のことを確認するために、泌尿器検査があります。2004年2月5日、このために病院に行きました。
 まず、織田さんのところに行き、簡単な聞き取りと、今後の検査のスケジュールの確認をおこないました。その後、織田さんから泌尿器科への紹介状をもらい、初診扱いで泌尿器科に行きました。
 泌尿器検査の内容は、
1、染色体のチェック
2、体毛(腋毛・足の毛など)のチェック
3、女性化乳房かどうかのチェック
4、睾丸・陰茎の大きさなどのチェック
5、前立腺のチェック
でした。
 1は、血液検査でおこないます。
 2は、服を脱いで、見て判断をします。
 3は、乳腺があるかないか、胸を触る(つまむ・笑)ことでおこないます。けっこう痛いです。
 4は、睾丸をつまんでいろいろやったり、ゲージや巻き尺でサイズを測ったりしておられたようです。これもけっこう痛かったのと、やっぱり精神的にしんどかったので、直接見ることができませんでした。
 5は、お尻から指をつっこんで、前立腺のあたりをぐりぐりしてチェックをされます。かなり痛かったです。

 感想ですが、泌尿器検査はやっぱりGIDの人にはしんどいのではないかと思いました。というのは、自分の身体が「男性(女性)」であることを、あらためて確認してしまうからです。
 もしも、「インターセックスを除外する」という項目がガイドラインの中になければ、この検査はいらなくなるのかなぁ。とすると、そうしてほしいなぁというのが、正直な気持ちです。
 まぁ、わたしみたいなええ年の人だったら、それはそれでいいかもしれませんが、若年層の人には、ほんとうにきついのではないかと思います。もっとも、「それを乗りこえなくちゃいけない」みたいな発想の人もいるだろうけど…。

 ちなみに、精神神経科(保険◯)+検査(保険×)で28,020円でした。高け〜(涙)。

、心理検査(その1)

 2004年2月21日、心理検査に来ました。
 精神科の待合室にいると、約束の時間ちょうどに、「◯◯さん」と呼ぶ声が聞こえてきました。さすが、下の名前はあくまで呼びません。
 で、担当に人に連れられて、別棟にある心理テストの部屋へ。
 まず、大きく4つのテストがあることの説明を受けました。ひとつは、とても簡単なもの。もうひとつは、家に持ち帰って答えるもの。残ったふたつは、それぞれ1時間程度かかるけっこう疲れるものという説明でした。で、今日やるのは、そのうちの3つ。疲れるもののうちのひとつは日をあらためてということでした。
 この時点で、わたしの好奇心は、ほぼ120%です(笑)。なにがでてくるのかな?
 検査が始まる前に「いままで心理検査を受けられたことはありますか?」とのこと。ま、いろいろうわさは聞いてたことはありますが、受けたことはないので「はじめてです」ととりあえずこたました。あと、「心理検査を受けることについてどう思いますか?」ということでした。これについては「ガイドラインの中で必要とされているので、納得しています」と答えました。「では」ということで。

検査1
 白い画用紙と鉛筆を渡されて、「木の絵を描いてください」。きたー。
 でも、どういう絵がどういう意味づけだったかおぼえていないっす。真ん中に書いたらどうとか端っこに半分書いたらどうとかあったなぁと思いながら、あまり気にせずに、とりあえず書きました。どんな絵だったか気になる人はこちら。
 続けて質問です。「この木は常緑樹ですか」「風は吹いていますか」「他に書き足すことはありますか」など。わたしの答は「いつも緑」「そよ風が吹いている」「根っこを枕に人が寝ている」でした。

検査2
 これがなかなかハード。だいたい1時間程度かかる検査のようです。ものによっては、時間を計るし、ものによっては「正解」があります。ただし、「すべてのものが答えられるわけではありませんので、わからないものはわからないと答えて下さい」とのことでした。全部の質問をその順番でおぼえているわけではないので、順不同&ないものありということで。
(1)知識テスト
 たとえば、「日本の首都は?」みたいな感じのものです。まぁ、それなりに答えられますが、そのうち知らないものも出てきたりして、自分の社会常識のなさについて思い知らされます(笑)。もっとも、問題をつくった人も、知らないことを聞かれたら答えられないわけで、結局、お互いさまということなんでしょうね(笑)。
(2)絵の中の足りないものの指摘
 はじめのうちは、とても簡単なのですが、だんだん難しくなってきます。あと、ほんとうに「知識」がないと、その絵の状況を見るだけでは答えられないものもあります。ちなみに、最後の絵については、わかりませんでした。ただ、「ない」というのも答かもしれないなどと思ったりして。あと、向こうの意図しないものを指摘した時「なるほど、他には」と言われると、これが苦しい(笑)。
(3)いくつかの絵でストーリーをつくる
 4枚〜6枚の絵を渡されて、そこからストーリーを考え、その通りの順番に並べ替えるというものです。いくつかの問いについては、露骨なヒントがあるので、すぐわかるのですが、これもなかなかわかりにくいものがあります。正解を出せばそれはそれでいいのでしょうが、不正解の場合は、なぜそういう不正解になったのかが評価されるのかなぁと。シートを見たら、ひとつ不正解で、順番がメモってありました。
(4)数字おぼえ
 まずは、言われた数字をおぼえて、その通りに答えます。はじめは3桁。やがて4桁…。と増えていきます。わたしは6桁になると見事に答えられなくなりました。おぼえていたのは最初と最後の数字だけ。わからないのに、えんえんと聞かれるということはありませんでした。そのあとは、数字を逆順で答える。こちらは、5桁ぐらいで挫折したような気がします(おぼえてない)。
(5)赤白ブロックの絵づくり
 これが一番おもしろいですね。与えられた絵柄をブロックを使ってつくります。途中でブロックの数が4個から9個に増えます。と、いきなり難易度が上がりますが、これがなかなかファイトがわきます。これもいろいろコツがあるようです。
(6)「〜のときどうしますか」「〜はどういうことですか」
 これ、なかなかマジで考えてしまいました。別に約束などしていないので、ネタをバラしてもいいはずなんですけど、やっぱりばらせない自分が情けないですが、問うた人間枯らしてみると「常識」というふうに考えることも、問われた人間からすると「思想」を問われているようなものも含まれます。もしもつっちーが質問を受けたら、暴れるだろうなぁと思うようなことも多々(笑)。
(6)暗算
 いや、これが一番参りました。問題を口頭で言われて、それを暗算で計算するのですが、ものすごい集中力が要求されます。なにせ、ふつうは問題を最後まで読んでからあらためて条件を考えるのですが、「◯◯の時、◯◯を答えよ」と口頭で言われたら、すべての情報をキープしなくちゃいけないです。はじめのうちはいいのですが、最後は、うちの生徒なら「文章題やぁ〜」とわめくような問題でした。最後の問題が終わって、前をチラリと見たら、「あ、まちごうた(涙)」。思わずつぶやくと、「いえ、こんなんできる人いませんから」と優しいフォローがはいってきました。
(7)パズル
 はじめはいいのですが、だんだん手がかりがなくなってきます。「自分は何をつくろうとしているんだろう」ととまどうのですが、ごちゃごちゃやっているうちに「あぁ、これをつくろうとしているんだぁ!」というのがわかりはじめ、それからは、それなりに目的意識が出てきたかなぁと。
(8)ふたつの言葉から共通点を探る
 これも、はじめのうちは「あぁ」という感じでわかるような問いなのですが、そのうち、対立概念とか、「なんだこれわ(爆)!」みたいなものが出てきて、どうこじつけるかというか、どう自由に発想するかなかなか難しかったです。
(9)言葉の説明
 はじめの知識テストとは違い、こちらの方は、その言葉について説明をすることを要求されます。で、知らない・使わない言葉も出てくるのですが、とりあえず漢字が読めるので、そこからなんとか説明しようとしてしまいました。あと、漠然とした説明をした時「他にありませんか」「もう少し話して下さい」というあたりの苦しいこと苦しいこと(笑)。だって、ごまかしてるもんね。
(10)数字と記号の関連
 1〜9の数字に記号が割り振ってあって、ランダムな数字の列の下に制限時間内に記号を書くというものです。これは、けっこうつくりが優しい感じでした。というのは、はじめのうちは特定の数字ばかりが出てきて、徐々にいろいろな数字が混在するようになっているので、はじめに出てきた数字は書いているうちにおぼえてしまえます。「全部できたらどうしよう」などと思っていたら、やっぱりできませんでした(笑)。

 すべて終わったあと、感想を聞かれました。正直な感想は「楽しかった」でした。すると、きっちりカルテに「楽しかった」と書いておられました。
 というか、口頭試問にしろなんにしろ、わたしが話した内容は特に必要のない場合を除き、すべてメモされます。さらに、時間が必要な場合は、ストップウォッチを押してタイムを計りながらその内容を書き写されます。めっちゃたいへんそう。たぶん被験者よりたいへんなんじゃないかな。「次回は…」と言われたので、「今日やってもいいですよ」と言ったところ、ちょっと首をかしげて「今日はお疲れでしょうから」と言われたのですが、もしかしたら、わたしより試験をされた方の方が疲れていたのではないかと。いや、マジで。
 その後、「お持ち帰りの検査」の説明。ボチボチとやったらいいということだったので、一安心。
 最後に「ところで、カルテによると高校の教員をされているということですが、教科は?」と言われたので「数学です」と答えると「はぁ…」という反応でした。問題によっては、きっちりパターンにはまっているので、考える必要もなく電光石火で答えたものもあったのですが、やたら時間がかかったのもあったので、ちょっとはずかしかったです。

 さて、残るひとつの課題は4月ですわ。
 そうそう、お勘定の方は、「自己負担10割」と書いてあるので、思わず1万円札を用意したのですが、精神科の診察とあわせて、1880円でした。

、心理検査(宿題)

 前回が3月、次回が4月。その間に、宿題ということで出されたのがMMPIでした。
 これは、受験態度のひずみを検出するとかいうものらしいです。まぁ、もともと心理検査なんて、ある程度バイアスがかかった形で受け答えするわけですから、そのバイアスを知ることで、よりましな値を出そうということなんでしょうね。
 しかし、この検査、困ります。というのは、「性」にかかわる設問がかなり多いのですが、それらがまた、答えようがないものが多いんです。
 たとえば、「性生活に別に問題はない」なんて答えようがないです。だって、どんな状況であっても、いまの状況が問題なければ「問題ない」でしかないわけで、すると「問題」の中身が無関係になってしまいます。「どちらでもない」という選択肢はあるのですが、わたしとしてはどちらかというと「問題があるといえばあるし、ないといえばない」つまり「どちらでもある」という感じなんですね。
 さらに「同性に強くひかれたことがある」なんていう質問については「その『同性』って誰やねん」というツッコミが入れたくなります。「性について悩んでいる」みたいな質問については、「だからこの検査を受けるハメになったんやんか」という一方、「すでに悩んでない」という話もあります。まぁ、ツッコミがいのある検査ですわ。

、心理検査(その2)

 2004年4月3日。心理検査の2回目です。
 前回と同じように、待合室までN平さんがお迎えに来て下さいました。N平さんは、GID研にも来ておられて、T築さんの名言「GIDの人はウソをつく」を聞いておられたので、まずはそのネタでひと笑い。
 さて、部屋に入りぎわに、「今回は机の配置が違います」と言われました。で、机の上を見ると、「ロールシャッハテスト」とあります。キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!という感じでした。この間のGID研で、T築さんは「ロールシャッハが一番自由度が高いだけに、まだウソがつきにくい」と言っておられました。でも、けっこう疲れるらしいです。いや、被験者だけじゃなく、検査する人もね。
 検査に入る前に、「ご自分のどういうことが知りたいですか?」と聞かれたので、「自分の中にある攻撃性と被虐性」それから「自尊感情」と答えました。

 ということで、いよいよ開始。
 全部で絵は10枚あります。とりあえず、沈黙が苦手なので、なんでもいいからしゃべりはじめ、頭の中では、「検査の時間は約1時間。まぁ1枚あたり5分しゃべればいいか」などと計算していました。ところが、5分たってもストップをかけるどころか「まだありますか?」と促されます。瞬間頭の中は「ええ〜」でした。
 ここでは、1枚1枚の絵がどういうものだったかについては触れません。というか、忘れました。
 ただ、はじめのうちは「黒っぽい絵(3枚目くらい)」で、だんだん「白っぽい絵(5枚目くらい)」になって、やがて「濃淡がある絵(8枚目くらい)」で、最後は「色つきの絵」だったようなおぼえがあります。
 わたしの場合、見た感じが「風景」に見えるものが多かったです。とくに、奥まったところにお城があったり、塔があったりする感じです。あと、白っぽいところが川に見えたのもあったように思います。ただ、それと同時に「怪物」にも見えるという傾向がありました。
 9枚目の絵については、「花瓶に花がいけてある」なんていう回答もしました。最後の絵には、とても躍動感を感じました。
 そんなことを延々と話をしていたのですが、7枚目くらいでふと時計を見ると、「えー、すでに2時間?」さすがに、9枚目、10枚目になると、「そのくらいで」と言われるようになりました。その後、振り返りの時間。それぞれの話の中で、こういうふうに見えたのはどこなのかとか、とりあえずメモはしたけどわからなかった言葉(わたしの場合は、「ここのエッジの部分がフラクタルの模様に見えます」などと言ってしまった)の説明とかをします。
 この段階で、すでに2時間半ほどたっていました。実はこの後精神神経科の診察がありました。途中、さすがに織田さんから「まだ〜?」という電話がかかってきました。N平さん「もう少しです」と答えていました。

 ロールシャッハは、最初にも書いたように、答える方もたいへんなのですが、検査をする方もほんとうにたいへんなようです。ま、他の検査もそうみたいですけど。
 ということで、中Hさん、ありがとうございました。

、ファーストオピニオンのための診察

 4月3日、心理検査に続けて、診察がありました。
 今回は、いつものようなGID治療のありかたについて、いろいろな意見交換も交えながら、わたし自身の成育歴であるとか、現在の状況についての調査がありました。
 主な質問の内容は「違和感を持ったのはいつか?」「小さい頃の遊びは?」などでした。ただ、織田さん、質問をしながらも「違和感なんていうのは、そのときは気づかないですよね」なんていう話もされました。ちなみに、わたしの答えは「女性の肉体への同一感は小さい頃からあった。違和感については、大学以降のこと。暴力性とか権力性といった男性ジェンダーへの拒否感が強い」というものでした。
 ところで、爆笑したのは「いつきさんの場合、『ホルモンを投与しないと、社会生活に支障がある』ということってあるんですか?」という質問でした。わたしはしばし考えて「(ホルモン投与しなくても)社会生活への支障はないですね」という答えしか出せませんでした。そらそうです。
 織田さんは「パス」のためにホルモンをするというふうに考えられているようなのですが、わたしにはあまりそういう気持ちはありません。公衆浴場などについては、基本的にあきらめています。ただし、一部解決しそうなところもあったりします。また、それ以外のところでは、まぁ、だいたい「女性の空間」に出入りしています。
 結局、自分の肉体との折りあいのつけ方なんだと思います。
 織田さんは「きわめて報告書が書きにくいのですが、でも、本来それがふつうなんでしょうね」と言っておられました。ということで、いつもの通り、1時間ほどの診察が終わりました。次回、セカンドの医者が来るとか…。

 そうそう、6〜8でしめて2530円でした。

9、心理検査の結果

 5月15日、関西医科大学付属病院に行って来ました。目的はふたつ。ひとつは、心理検査の結果をきくこと。もうひとつは、二人目の精神科医の診察を受けることです。
 まずは心理検査の結果。
 いや、笑いました。と同時に、なんか一枚一枚服を脱がされるような気恥ずかしさを感じながらN平さんの話を聞きました。なんかあたってるんですねぇ。
 まず、バウムテストについて。これについては、ほとんどなにも話されませんでした。
 次に作業なんとかの結果。なんでも平均が10ポイントくらいになるらしいのですが、ほとんど12〜15でした。ちょっとうれしかったりします。ただ、数字おぼえがやっぱり低くて「プレッシャーがかかると集中力がとぎれますね」と言われました。たしかに…。
 続いて、MMRI。ほぼ「正常値」なんですが、なんかストレスがかかっているそうな。まぁ、たしかにかかってます(笑)。最後はロールシャッハ。ここでも、作業能力は高いけど、そこそこストレスを抱えていることがわかりました。ほかにもおもしろい話がボロボロでてきました。たとえば、「たくさんの人がいるような所からは、少し距離を置く傾向がありますね。でも、いろんな活動をされている印象とは少し違いますね」なんつー話もあったのですが、まぁ、玖伊屋に来ている人だったら「そのとーり!」ですよね(笑)。う〜ん、あと、「少し人とは変わった発想をするようですね」と言われてしまいました。んなことはないですよ。わたしのまわりは、わたしなんて足元にも及ばない(ry・笑)。
 で、わたしへのアドバイス。「がんばりすぎなので、ちょっと休まれたほうがいいのでは」。へい、ありがとうございますm(_ _)m。
 結果をきいての感想は「仕事をする分にはそこそお器用なので便利だけど、つきあいたいタイプじゃないな」と。

10、セカンドオピニオンとか新しい診察券のこととか

 そのあと、2人目の精神科医の診察でした。おきまりの「違和感を感じたのはいつ頃ですか?」という問いには「違和感というより、反対の性への同一感ですね。女性の肉体のパーツを自分の身体につけたいという欲望は、小学校の頃からありました」と答えました。まぁ、これが正直なところなんです。あと、「現在の苦しみは?」と聞かれたので、ここでも正直なところで答えました。「小さい頃は、『こんなもん』と封印していたので、苦しいとかどうとかいうことはありませんでした。自分がトランスとわかってからの数年が、『なにができるのか、なにがしたいのか』がわからなかったので、いちばんしんどかったです。いまは、かなり楽です」
 20分ほど話をして、「じゃぁ診断書を書きます」。「へ?」

 次にいつもの織田さんの診察。「なにか変わったことはありますか?」「いや、転勤もしませんでしたし(笑)」。
 そうそう。先日アクセス解析していたら、ac.jpがあったので、どこかなと思ったら、関西医科大でした。そんな話をしたら、「やらなくていいケンカをしたとか」。おいおい、読んではるやん。ま、最近落ち気味なんで、そんなこととか話をしました。あとは、いつものとおり、若年層のトランスの話。あと、GID派とトランスジェンダリズム派の説明だったっけ。
 で、最後に、「5月26日に委員会を開いて、そこで審議をします」とのことでした。これまた「へ?」。

 あと、名前が変わったので、その手続きをお願いすると、「じゃぁ受付に一緒に行きましょう。どういう手続きをするのか知りたいので」とのことでした。
 初診受付に行って、保険証を見せながら、名前が変わったことを話すと、保険証をあっちこっちひっくり返しながら、やがて裏側を一生懸命見ておられます。ちゃうって(笑)。で、織田さんが「GIDの患者さんで」と説明。ちゃうって(笑)。せめて前に「一応」とか「なんちゃって」とかつけてもらわないと。
 そこで、カルテと診察券の性別欄を指して、「これ、空欄にできませんか?」というと、「空欄にはできないんです。カルテは『男』じゃないといけないんですけど、診察券は『F』にします」。またまた「へ?」。
 結局、こんなもんをもらってしまいました。また、いろいろ言われるやんかぁ。でも、なんとも言えない気持ちだったことは確かですね。

 しかし、まるでベルトコンベアーに乗ったように、改名も第2段階もすいすい進んでいくのが、ちょっと怖いです。

 続いて、セカンドオピニオンのための二人目の精神科医の診察です。約30分、とりあえず、いろいろ話を聞かれました。

 この日のお代は1180円でした。

11、ホルモンの説明

 6月24日、生まれてはじめて、自分のことで「婦人科」に行きました。なんでも関西医科大学付属病院では、ある日とある時間はGIDの人と決めているそうで、「一般の人」と会わずにすむようにしているそうです。ま、これはこれで配慮なんでしょうね。わたしとしては、どうでもいいですけど。ちなみに、わたしは指定された曜日には行ったのですが、時間的にはどうしても無理な時間なので、時間ははずれていました。
 で、到着したら、他に患者さんは誰もいません。遅すぎたということですね。、
 さて、ホルモンについてはあちこちのサイトで詳細な説明がされています。ところが、わたしはそれを読むのがめんどくさいので、きちんと知るのははじめてのことでした。で、わたしが聞いた内容をかいつまんで…。
 ホルモン療法に使うホルモンは「黄体ホルモン」と「卵胞ホルモン」があります。まずは、「卵胞ホルモン」から。
 卵胞ホルモンの中でもよく使われるのが「プレマリン」と「エストラダーム」です。これらはともにE2(エストロゲン2)です。「プレマリン」は飲み薬。「エストラダーム」は貼り薬です。で、このふたつの最大の違いは金額です。プレマリンの薬価は、13.5円もの。それに対して、エストラダームの薬価は146円です。プレマリンの場合、一日2錠飲むとして(人によっては6錠飲むとか)、13.5×2×30で、810円。薬局で買うとこれの10倍弱ですから、月8000円程度です。それに対して、エストラダームの場合は、2日に1枚使うとして、146×15で、2190円。ということは、月20000円以上になります。つまり、約2.5倍です。これが長い間続くわけですから、かなりの高額になります。保険が効けば安いんですけどねぇ。なお、ものの本によると、「エストラダームは副作用が少ない」とありますが、お医者さんの話によると、「結局長い目で見たら一緒ですよ」と言われました。なお、卵胞ホルモンの中には「エストリール」というのもあるそうですが、これはE3というものらしくて、高齢の方に処方したりするとても弱いものらしいです。
 黄体ホルモンには「プロベラ」「ルトラール」「ノアルラン」といったものがあるそうです。なんでも、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを併用すると効果は高いそうです。ところが、卵胞ホルモンは血栓症などをおさえる働きとかがあるようですが、黄体ホルモンは逆に血栓症などを起こさせやすくする働きがあるようです。ですから、併用の副作用はとても大きいそうです。
 ところで、どこで処方してもらうかというのはとても大切な問題です。ということで、「地元の婦人科と連携をとってもらうことはできるのですか?」と聞くと、「それは可能です」とのことでした。でも、かなり難しいんだろうなぁ。

12、倫理委員会のこと

 続いて、織田さんの診察です。
 なんか、倫理委員会ってとっても大変なところだそうです。GID「治療」には、精神科・婦人科・泌尿器科・形成外科がかかわります。現在、第3段階までを行っているところはすべてこれらの診療科がひとつの病院にあります。ところが、ひとつの病院内にあるからといって、各診療科の考えが一致しているかというと、そういうわけではありません。それぞれの考え方に歩み寄りが見られないと考えられる病院では、倫理委員会をつくることすら難しいようです。それが、GIDを扱う病院の少なさの原因のひとつのようです。
 関西医科大学付属病院でも、倫理委員会はできたものの、そこでの論議はいろいろあるようです。
 なんでも、「結婚している人間がホルモン療法に移行する際、パートナーの意見が聞きたい」と言った人がいたそうな。いや、あとで訴訟になったりとかいうことを考えると、そういう発言はわからないでもないですが、そんなんムチャクチャです。ガイドラインにすら書いていないことを、患者とその家族に要求するのは、医療の側の逸脱としか思えません。当然「それはぜったいダメです」と即答しました。
 わたしの知っている人の中でも、パートナーの反対をかわしながらホルモンの投与を行っている人もいますし、場合によっては、パートナーには隠して行っている人もいることでしょう。じゃぁ、その人の生き方はまちがっているのか。んなわけがないです。それは人それぞれのライフスタイルです。隠しながら行うことで、きわめて危ういバランスを保っていることもあるでしょうし、そこに踏み込むことは、ライフスタイルへの侵害です。
 ところで、どうもわたしもその対象になっているようです。織田さんに「いつごろホルモンを処方してもらえますか?」と聞いたところ、「早くて2〜3ヶ月あと」と言われました。この瞬間、プチ切れでした(ブチ切れじゃないです・笑)。2001年4月に岡山に行って以来3年、それに比べたら、たしかに2〜3ヶ月は短いです。でも、やっぱりそういうものじゃないです。で、「もう少し早くなりませんか?」と聞くと、「う〜ん、とりあえず2ヶ月」という答でした。どうやらごり押しで倫理委員会を通していくより、説得しながら合意のもとで通していく方がいいという判断のようです。
 まぁ、自由診療ではなく、ガイドラインという道を選択したのは、このあたりの意図があったわけですから、しゃーないです。
 家に帰ってパートナーにこのことを言うと、「わたしに聞いてくれたら、一刻も早く処方をしてくれと言うたんのに」と言っていました。でも、自分だけが逃げ切るのはねぇ(笑)。
 ということで、この日も1180円でした。

13、第2段階突入か?

 8月5日、7月28日の倫理委員会の結果を聞く+婦人科診察のために行きました。
 最近、関西医科大学のほうもGIDの患者さんが増えてきたみたいで、とくに「その日」である木曜日は織田さんは大忙しのようです。で、待合室に行くと、いるわいるわ。見るからに「わたしGIDです」という感じの人たち。まぁわたしもそのうちの一人なんですけどね(笑)。ということで、待ち時間は2〜3時間です。まぁ、関東のある病院では待ち時間は1日とかいううわさもあるので、短い方なんでしょうけど。
 で、ひたすら待っていると、受付から呼び出しです。「先に婦人科に行ってください」とのことでした。
 婦人科に行くと、前にホルモンの説明をしてくれた先生が待っていました。
 まずはじめに、「倫理委員会通りましたが、ホルモンを希望されますか?」との質問。ここでもちろん「はい」です。で、次に「いま行っておられる病院でされますか?」「はぁ?」「すでにホルモンされていますよね」「いえ」。ここであわてて「あ、そうでした。いつきさんはされていないんでしたっけ」。この先生、なかなかのうっかりもので、そのボケ加減が大好きです。
 で、ふたたび薬価の説明を受けました。プレマリンが約39円、エストラジオールが約140円。身体へのインパクトは、最終的にはどれも同じとのことです。それと、プロベラを併用するかどうかについても聞かれました。乳房を育てるためには効果的ということですが、血栓症などの危険も高まります。プロベラは、必要ならばするということで、今回は見送ることにしました。その後、1日何錠からはじめるかということについての相談です。たいていは2錠〜8錠とのことです。いろいろ考えてとりあえず2錠からはじめることにしました。
 続けて、血液検査の話です。できれば3ヶ月ごと、最低6ヶ月に一回は受けてほしいとのことです。もちろん自費なので、一回14000円ほどかかります。ただ、不要なものを省くともう少し安くなるとのことでした。
 ところで、今現在のエストロゲンの数値を聞いてびっくり。「けっこう高いですね。49ほどあります」。もしかしたら、プレマリンけっこう効くかも。
 最後に、次回の診察と会わせて何錠出してもらうかです。先生は「何錠でも出せますけど」。おいおい、そんなもんかい(笑)。次回を9月に設定したので、28日分出してもらうことにしました。つまり、2錠×28日で56錠ということになります。さて、薬局で買ったらいくらになるかなぁ。

14、第3段階への道(藁)

 続いて、織田さんの診察です。
 「第3段階は希望されていますか?」「いまはまだわかりません」。
 ということで、これからは必要があれば来ればいいということです。まぁ、婦人科には9月に来るわけですから、当面変化について話をするために9月に来ることにはしました。でも、いままでのように詰めてくる必要はなさそうです。ちなみに、第3段階を希望するということであれば、「もう少し聞きたいことがある」ということでしたので、また通う必要があるんでしょうね。病院通いは面倒といえば面倒なのですが、なくなるとちょっと寂しいような気もします(笑)。
 つーことで、「第3段階への道」はあるかどうかわかりません。
 本日の診察代は1904円でした。

15、プレマリン、ゲット!

 病院の支払いを終えて、近くの院外薬局へ。
 婦人科でもらった処方箋を渡して椅子に座っていると、「あの〜、10割負担ですか?」「そうですよ」「労災かなにか…」「いや、ないですよ」。う〜ん、プレマリンをどういう労災で落とすんだろう…。で、すぐに出してもらいました。あとは、薬局でありがちな薬についての説明を受けて終了。
 しかし、処方箋にきっちり「男」って書いてあったんだけど、薬局の人は読んだのかなぁ。
 ちなみに、56錠で2750円でした。一錠、約50円ということですね。

 つーことで、とりあえず「第2段階への道」はひとまず終了ということになりますか…。