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解放へのはばたきNo.71 特集「反差別連帯 −部落解放への欠かせない課題− 」より
  性的少数者差別

いつき

はじめに、ある部落の若者からのメールを紹介したい。

 先日は、お世話になりました。

 いつきさんに色々お話を聞いてもらってすごく気が楽になりました。部落のコミュニティにいても、ゲイコミュニティにいても自分の存在が何か違うなぁと感じていました。しかし、いつきさんとお話ししたあの瞬間だけ本当の自分が出せたような気がしました。

 部落のコミュニティでもゲイのコミュニティでもなにかビクビクしていましたが、あの瞬間だけは解き放たれました。本当は、部落コミュニティでカミングアウトが出来れば本当に楽なのですが、全く出来ません。(以下、略)

 部落解放運動は、日本における人権にかかわる運動に、多くの成果を残してきた。しかし、セクシュアリティあるいはジェンダーといったことについては、ほとんど関心を払ってこなかったのではないあろうか。

 たとえば、結婚差別は、部落差別の本質ともかかわり、差別がもっとも象徴的にあらわれるものである。それに抗して、これまでにさまざまな闘いがあった。しかし、それが故に「結婚すること」を無前提に是とし、「結婚しない生き方」への無理解を生んできたのではないだろうか。また、部落内あるいは解放運動の中には、とても強いジェンダーがあることがこの間指摘されはじめている。

 こうした価値観は、典型的な家族のあり方・ジェンダーのあり方に疑問を持つ人、あるいははずれた生き方をする人にとって、とても生きにくさを感じる。それを感じるのは、たとえば「女性」であり「同性愛者/ バイセクシュアル( 相手の性別が性的指向の絶対要因とならない性的指向) /Aセクシュアル( 性的欲望を持たない人)」といった性的指向が必ずしも異性に向かない人であり、「トランスジェンダー/性同一性障害」といわれる、既存のジェンダーの縛りとは別の生き方をする/せざるを得ない人々である。そして、そういう人が自らの存在を顕在化させること(カムアウト)はとてもむずかしい。

 こうした状況を生み出した原因は、セクシュアリティあるいはジェンダーについての知識理解、そして自らのそれに向きあう姿勢、双方の欠如にあるように思う。しかし、それを乗り越えた時、とても豊かな世界がある。

 最初に紹介した若者は、メールの最後をこうしめくくっている。

 わたしのムラでも、セクシャルマイノリティの問題を是非やりましょう。そのときはまた、相談に乗ってください。